月の下で氷る人

 セクシー・モチベーション。

 

 

私は大勢の友達に囲まれるタイプではないが、小学校からの幼馴染である栞(しおり)とは本当に仲が良かった。彼女は美しく、そして誰にでも分け隔てなく優しかった。同性からも異性からも慕われる彼女は友人もとても多かったが、それでも私のことを親友と呼び常に行動を共にしてくれた。

 

 

セクシー・エレベーター。

 

 

夏休み、満月の夜、栞から電話がかかってきた。近所の港に月を見に行こうという誘いだった。彼女は満月が訪れるたびにそう言って私を港へ連れ出した。満月を見ている間、彼女はずっと上の空で、その事に最初は憤ったりしたものだが、今ではすっかり慣れてしまったし、月を見つめる美しい彼女の横顔を見つめていると至極幸せな気持ちになれた。

 

 

セクシー・スターライト。

 

 

自転車を港まで走らせる、栞は既に到着していて来る途中にコンビニで買ったであろう缶チューハイを飲んで上機嫌になっていた。まだ未成年ではあるが、しっかりと化粧をして小綺麗な服を着た彼女はとてもそうは見えない。それをいい事に彼女はしばしばコンビニでアルコールを買うのだった。自転車から降りた私に袋から取り出した缶チューハイを差し出す。悪い気はしなかった。いけないことをするのは心地よかったし、秘密を共有することで彼女との関係がより深まるような気がしたからだ。

 

 

セクシー・ゲート。

 

 

月を見上げる栞の頬は、アルコールでほのかに桃色に染まっていた。長い睫毛に縁取られた大きな瞳は宝石のように美しく、それでいてこの世のものではないような不気味さを宿していた。彼女はあまりにも無垢過ぎた。瞬きもせずに月の光を吸い込んでいて、まるで時間が止まっているかのようだった。

何かがおかしいと思ったのは、さっきまで微かに聞こえていた彼女の呼吸の音が聴こえなくなったからだった。

 

 

セクシー・クルージング。

 

 

栞の頬に触れると、まるで氷のように冷たかった、いや、実際に氷だった。

栞は氷になっていた。どうすればいいか分からずしばらく放心した私は、それでもなんとか119番をした。程なくしてやってきた救急車が私と氷になった栞を乗せて向かった先は、病院ではなく市役所だった。

 

 

セクシー・コールセンター。

 

 

栞はどうやら月下氷人になってしまったようだった。月を見つめ過ぎたのだった。氷になった栞は公民館のロビーに置かれた。室温を程良く下げていた。

 

夏休みの間、私は毎日公民館を訪れて、閉館の時間まで氷になった栞を見つめ続けた。氷になった彼女の見つめる先にあるのは月ではなく蛍光灯だったが、それでも幸せそうな顔をしていた。それを見ていると私も幸せな気持ちになるのだった。

 

夏休みが終わり、季節が秋に差し掛かると栞は公民館のロビーから撤去された。室温を下げる必要はもう無いからだ。氷になった栞の所在はわからない、公民館の倉庫で保管されているのか、あるいは処分されてしまったのか。

来年の夏にまた栞に会えるといいな、と私は港で真円の月を見上げながら考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日ピンク色のUFO見たんだけど、写真撮ろうと思ってスマホ出した瞬間ミサイル飛んできてめちゃくちゃ焦った、爆破されて服とか焼けて全裸になっちゃったからかなり恥ずかしかった笑