ゆめかわの船を見ただろうか

ゆめかわの空を見ただろうか。

 

AM5:30、残っているアルコールやさっき飲んだ睡眠導入剤で軽く朦朧としながら俺はタバコと小銭だけ持って外に出た。

 

上がタケオキクチの寝巻き、下は中学の時のジャージ、それにガウンだけ羽織って自動販売機まで向かっている。暖かいミルクティーを買う。

 

一口飲んで見上げると、ゆめかわの空をみつけてしまった。

 

終わりかけた夜が、始まりつつある朝の薄い青色や曖昧な桃色に焼かれて、藤色になっている。

 

君はゆめかわの空を見ただろうか。

 

俺はそれを見ながらタバコに火をつけた。

その辺に座り込んで、吐いた煙がゆめかわの空に曖昧になった。

ミルクティーで体を温めながら、タバコを一本吸い終わる頃には、空は朝に焼かれていた。

 

公園にはルールがあって、俺はそれを侵さない様に慎重に入ってベンチに座った。

 

公園やバス停などに設置されているベンチは俺の船、俺が夜を渡るための船。

夜になれば俺は船に乗り夜を渡る。

今は朝のベンチである。 

朝になると気温が低くて、生活が見える。

俺はそれの邪魔にならないように身を潜めてタバコを吸う。

 

あのゆめかわの空を君は見ただろうか。

 

俺は初めてゆめかわの船に乗った。

ゆめかわの船は飾りをつけて浮かんでいる。

足がふらついている。

 

ゆめかわの船が流れて、どこか正しい場所や、正しくない場所に行くだろう。

 

ゆめかわの船は初めて動いて、進み出す。

 

 ゆめかわの船が進み出す。

 

君はゆめかわの空を見ただろうか。

 

君はゆめかわの船を見るだろうか。

 

ゆめかわの船が進んでいく。

 

ゆめかわの船はどこへ進んでいくのか。 

 

ゆめかわの船を見ただろうか。

 

君はゆめかわの船を見ただろうか。