魔法みたいな足取りで

ロストジェネレーション元年は走り出した。

好きな野菜を組み合わせて君だけのサラダを作ろう。

 

夏がたった今到着しました!

 

 

 

仕事の依頼が入った。

俺はこの街で悪を狩り続けるしがないハンター。この街は悪に溢れているが、ハンター達が日夜悪と戦うことによってギリギリ均衡を保っている。その事はこの街の市民には知る由もない……。

「先輩、サクッと終わらせてはなまるうどん行きましょうよ」

3ヶ月前に俺の相棒になった天才女子高生ハンター、神田場林 うにゅ子(かんだばばやし うにゅこ)は手の中で鉄製の定規をくるくると回しながら言った。

彼女はつい半年前にハンターになったばかりだが、まるで小学生が鬼ごっこをしてるうちに暑くなって親に着せられた上着をジャングルジムに一旦かけておくように立て続けに功績を残し、歴代最速でシルバークラスハンターになった逸材だ。

ちなみに俺は全然まるで仕事が出来ないカスだから10年ハンターをやっていて未だにぷにぷにチョコ入りマシュマロクラスだ。

うにゅ子がパートナーになってから、劣等感で夜も眠れない、昨日は一枚のティッシュをどれだけ細かく千切れるか選手権を個人的に開催し、最終的に上達し過ぎて完全に粉になった一枚のティッシュを誤って吸い込んでしまいむせまくっていたら朝が来ていた。

 

これは一般には知られていない事だが、悪というのは概念ではない、明確な形を持っている。それは時に痩せた馬、時に巨大なルービックキューブ、時に下半身がキャタピラの数学教師の姿となって、人間社会に溶け込んでいる。

それらを見抜き、人知れず処分するのがハンターの仕事だ。

 

今回の悪は駅前のパチンコ屋の裏で見つかった、上半身が羽の生えたコーギー、下半身はタコの姿だった。しかし見た目に惑わされてはいけない、悪と戦うのは常に命がけであり、一瞬たりとも油断は許されないからだ。

気をつけろ、そう口に出そうとした瞬間に、うにゅ子はタコの足に貫かれていた。腹から内臓がこぼれ落ち、辺り一面に血が飛びちって、老人が入れたばかりのコーヒーをこぼし、信号が赤から青に変わり、新種の蝶が発見され、父の日に娘からプレゼントされた少し派手なネクタイを女性社員に褒められた男が気恥ずかしげに微笑んだ。

 

うにゅ子が勝てない相手に俺が勝てるわけがない、俺は脱兎の如く逃げ出した。帰りにコンビニに寄って菓子パンを3つ買い、2つ食べたところであとは明日の朝に食べることにして歯を磨き眠った。

 

日本最速のスピードパン屋さん。

 

美人過ぎる全自動洗濯機。

 

甘くなくてゴクゴクいけちゃうさっぱりとした毒汁(どくじる)。

 

その後。

俺はうにゅ子の葬儀で焼香のやり方が全く分からず、どうすればいいか分からなくなってオイオイ泣いた……。あと仕事もクビになったしピンク色のUFOも見た。

 

 

深海を漂う1匹のクラゲが全てにおいて正しかった。昨日から鏡に映るのが知らない人の顔になった。道端に放置されてる自転車のスポークに蜘蛛が巣を作っていた。飲める棒という意味でのドリンクバー。

 

はなまるうどんのいなり寿司を食べていた時、ふとうにゅ子の事を思い出した。あいつははなまるうどんに来るたびにうどんの類を頼まずに天ぷらといなり寿司だけを食べていた。

 

猫耳のついてるパーカーとか、猫の形になってるニーソックス履いてる人みたらなんかよくわかんないけど、おっ キタキタ みたいな気持ちになりませんか?ならない人は謝ってください。

 

とっておきのクッキーと紅茶でお茶会をしましょう。クッキーは食べてもサクサク言わないし、紅茶は飲めば飲むほど健康になる魔法の紅茶です。窓から柔らかな陽の光が差し込んで、鳥達が囀る声が聞こえます。太陽はずっと沈まずに時計の針は永遠に3時を指し続ける、くすくす笑いながら誰も傷つかない素敵で楽しい話だけをして、永遠にお茶会を続ける。

 

 

 

 

靴を履かずにお散歩しただけなのに足の裏がめちゃくちゃに汚れていた、妙だ、これは一体…………………?